2007年 12月 16日
蜂蜜 |
あと5日仕事をすれば冬休みである。この冬休みを首を長くして待っていた。何故なら大好きなブダペストへ行けるからだった。航空券も予約して後はその日を待つだけだったが、突然中止になった。全く残念だった。しかし理由が理由なので仕方がない。来年の夏迄じっくり待つことにしよう、と腹を決たが、8ヶ月も先なのでそんなに我慢できるかは定かではない。昨晩、ブダペスト訪問中止を知らせるために友人に電話をした。それは私が遊びに行くことを楽しみにしてくれていた友人には楽しい知らせではなかったが、夏迄待ちましょう、と言った、何しろ私たちは冷静に物事を考えることが出来る大人なので。勿論私がそれまで我慢することが出来る筈がないことを友人も十分承知した上で。実はこの電話は単にそのことを伝えたくて掛けたのではなかった。蜂蜜である。友人は蜂蜜を手に入れる手筈を整えてくれていたのだった。蜂蜜は友人のそのまた友人、この夏ブダペストで知り合ったササという名の青年の実家かそれとも親戚かが作っている蜂蜜である。この蜂蜜を初めて食べたのはもう5年も前になるだろうか。美味しいから食べてごらん、と言う友人に薦められるがまま大きなスプーンで一口食べてみた。それはアカシアの花の蜜から作られた明るい色をした蜂蜜で、甘いけれど甘過ぎず、さらりと水っぽくないくせにドロリともしていない、ねっとりしているかと思えばそうでもない。口に入れた瞬間から喉を通過するまでに感じたのは"つるり"であった。甘過ぎないし食感が重くないからまたもう一口食べたくなる。大体私にとって蜂蜜とは、紅茶に入れたり暖かいミルクに入れたり、それともチーズの上に垂らして一緒に頂くものであった。こんな風に蜂蜜を食べるなんてことは好まなかった。それは大抵の場合がしつこい甘さが口の中に残ってうんざりするからであった。しかしこれは違う。つるり、つるりである。ハンガリーの蜂蜜は有名。良質なのだ。その中でもこれはかなり良質だと友人は言う。それ以来友人はササの蜂蜜を思い出しては予約してくれるようになった。予約、そうだ、それはまさに予約と言うに相応しい。早く手を打っておかないとあっという間に無くなってしまう蜂蜜なのだから。この冬の訪問が中止になった時、実を言うと一番の気掛かりはササの蜂蜜であった。あの蜂蜜はどうなるのだろう。これ幸いと誰か他の人の手に渡ってしまうことがあってはいけない。そうだ、電話で釘を刺しておこう。長々と色んな話をした最後に、私はまるで今ふと思い出したかのように付け加えた。"あ、ササの蜂蜜は夏までとっておいてね。" 本当はこの一言が一番言いたかったくせに。
by yspringmind
| 2007-12-16 23:11
| 好きなこと・好きなもの