2007年 08月 30日
塔に暮らす |
ボローニャ旧市街の中心、2本の塔の前に真っ直ぐ西に延びるvia rizzoriからvia oberdanに曲って直ぐ右側にある脇道に入る。そこはあまりひと気のない場所で、知らない人を一瞬躊躇させる雰囲気が漂っている。何か胡散くらい訳でもない。ただ、足を踏み入れていいのかな、と思わせるのである。私がはじめてここに足を踏み入れた時もそうであった。良い気候の春の日の真昼、大通りは春を楽しむ人達で溢れかえっていると言うのにここには人間ひとり居なかった。物音もせず、ただただセピア色の世界があったのだった。別に個人の所有うちではないのだから堂々としていれば良いのに、周りを見回してこそこそと中に入ったのを覚えている。中に入っていくと前方と左手に路地が続く。左手の路はvicolo tubertiniと呼ばれていて、そこだけ中世の時代が息づいているようだった。路に面してあるのは頑丈な塔。塔の名前ははtorre uguzzoni (ウグッツォーニ塔)。12世紀に家屋として建てられた高さは僅か32mの塔である。家屋として建てられた、という注意書きがあるところからuguzzoni一家が住んではないかと想像するが、これは私の単なる想像であって確かめる術もない。何時だったか、ボローニャの友達が塔に住むのが夢だ、と言っていた。あの時はピンと来なくて聞き流したが、家屋として建てられた塔を目の前にしてふと思い出した。昔使われていた入り口や窓はレンガとセメントで硬く閉じられている。昔の窓や入り口は冬を温かく過ごす為に小さめに作られているから、もっと陽射しを取り入れるために、もっと使いやすいようにと考えたのか、別のところにもう少し大きめで実用的な窓と入り口が設けられていた。いったい誰が住んでいるのだろう。家屋にしては造りが小さい。きっと中の階段は狭くて急勾配だろう。分厚い壁が夏の暑さを遮って真夏でもひんやりしているに違いない。それにしても壁の厚みはどのくらいだろう。たぶん70,80cm位あるのではないだろうか。だとしたら中は外見よりも更に狭いわけだが天井がとても高く出来ているだろうから閉塞感は感じないに違いない。そんなことを考えながら暫く塔を眺めた。12,13世紀頃、権力と豊かさの象徴として塔を建てるのがブームだったボローニャ。この塔もそのひとつなのだろうか。
by yspringmind
| 2007-08-30 22:25
| bologna散策・あれこれ