2009年 10月 19日
若者達 |
つい最近のことなのにずっと前のことに思えるのは、他でもない、街行く人達が軽装だったからだ。丸首のTシャツに薄手のセーターを重ねただけの彼女達。道のこちら側から見たところ高校生と思われた。彼女達は一体何をしているのだろう。信号のない横断歩道を渡ろうと車の切れ目を探しながらそんなことを考えた。広場でもないそんな所で。簡単に言えば道路の真ん中に建つモニュメントの下で。道の真ん中と言えば中央分離帯なる場所に駐輪所があるのも面白い。そんなことを考え出すとボローニャにはそんな小さな不思議が一杯だ。腰を下ろして物思い風だった彼女が立ち上がった。こちらに向って右手を大きく左右に振っている。さて、知り合いだっただろうか。と、首をかしげる私だったが隣に彼女より少し年上の素敵な青年が立っていることに気がついた。素敵な青年。いや、彼が素敵に見えたのは彼が掛けていた眼鏡フレームのせいかもしれなかった。黒く見えるが光によってこげ茶色にも見える。何だろう、この眼鏡は何だろう。と目を凝らしてみてみると、分かった、イヴ・サンローランであった。一昔前の、私がまだ子供だった頃のことを思い出させる眼鏡だった。私の父もこんな眼鏡をしていたっけ。勿論イヴ・サンローランではなかったけれど。凝視する私に気がついて驚く青年。私は慌てて言い訳する。いや、その、眼鏡がね。彼の両親のお古だろうか。間違いなくそれは彼の自慢なのだろう。ああ、うん。そう言って嬉しそうな顔を一瞬見せてくれると、彼は彼女の所へ駆け寄った。無邪気に手を振る赤毛の彼女と昔の匂いがする眼鏡を掛けた感じの良い青年。映画の一場面のように美しかった。
by yspringmind
| 2009-10-19 23:24
| bologna散策・あれこれ